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●彗星はどこから来るのか●

 ハレー彗星やエンケ彗星をはじめ太陽系内を公転している「周期彗星」のうち、その周期が200年以内で2回以上の回帰を観測されている彗星は、今年4月現在で143個発見されています。これ以外の彗星は、非常に長い周期を持つ「長周期彗星」か、1回しか太陽に接近しない彗星ということになります。
 周期彗星のうち約80%は、周期5〜7年で太陽のまわりをまわっていて、その軌道は木星軌道付近までの楕円軌道です。木星といえば、太陽系最大の惑星です。彗星が太陽のまわりをまわるようになるために、木星の影響はやはり大きなものになるのでしょうか。
 周期彗星の軌道を逆に計算していくと、最初から太陽のまわりをまわっていたわけでは無いようです。宇宙空間を旅してきた彗星が、たまたま太陽や惑星の近くを通りかかり軌道を変えられることにより、太陽のまわりをまわるようになったと考えられています。では、その彗星はいったいどこからやってきたのでしょうか。この謎は長らく解明されていませんでしたが、20世紀後半からたくさんの観測や研究から2つの仮説が立てられ、その検証が行われています。
 ドイツで生まれてアメリカで研究をしていたジェラード・カイパー(Gerard Kuiper 1905〜1973)は、海王星の軌道の外側に小惑星のような微小天体が帯状に広がっていて、それが他の惑星や天体の影響により軌道を変えられて太陽に向かってきて彗星になる。という仮説を立てました。
 カイパーの仮説は当時はほとんど受け入れられていませんでしたが、1977年にひとつの特異な小惑星が発見されます。この天体は小惑星として観測され、土星軌道の手前(8.443AU)と天王星軌道の向こう側(18.765AU)の間を公転する楕円軌道を持っていました。この天体には「キロン(Chiron)という名前が付けられ、当時見つかっていたいくつかの特異小惑星と一緒に分類されていました。ところが、この天体を継続して観測していくと、ときどき彗星のように拡散状にひろがって見えるときがあることがわかりました。1992年には、キロンと同じような軌道を持つ新しい天体も発見されました。この天体はキロンよりさらに遠い31.835AUの海王星軌道付近と土星軌道の間を公転しており、この天体には「フォラス(Pholus)」という名前が付けられました。

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カイパーベルトの予想図

 この後このような軌道の天体は「ケンタウルス族」と分類され、現在は42個の天体の軌道が確定しています。さらにカイパーの仮説による帯状に広がる領域にも、1992年8月30日に1992QB1が発見されて以来多数の小惑星が存在することがわかり、この小惑星の帯のことを「カイパーベルト」と呼ぶようになりました。カイパーベルトには、直径100km以上の天体が35,000以上もあると考えられており、これからも新しいカイパーベルト天体が次々と発見されていくでしょう。
 現在有力な説としては、カイパーベルト天体が海王星や他の天体に接近し軌道を変えられ、太陽系の中心方向に移動を開始し、木星や土星などの大きな惑星の重力を受けて軌道を次第に変えて行き、周期彗星になるのではないか?という説です。この説によると、ケンタウルス族の小惑星は「彗星予備軍」のような天体で、軌道を周回するうちに木星や土星の重力により再び軌道を変えられて、太陽の周りを回る周期彗星になるのではないかと考えられています。

 もうひとつ、ドイツの天文学者オールト(Jan Hendrik Oort 1900-1992)が考えた彗星の巣という説があります。オールトは、これまでに出現した多数の長周期彗星や放物線軌道(太陽に1回しか接近しない)の彗星の軌道を計算し、その起源が太陽系外の30,000AU〜1光年くらいのところに集まっていることを指摘しました。オールトは、ここに彗星の巣のような雲状の領域があり、そこから彗星がやってきているという仮説を立てました。その後出現した彗星のうちのいくつかもこのオールトの雲の領域から来ているらしいことがわかっています。しかし、オールトの説はまだ実際に検証されていないことがたくさんあり、正確な事実はわかっていません。

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