★かに星雲 M1

 おうし座の角の先端ζ(ゼータ)星の北1.5°のところに、「かに星雲」という名前で親しまれている超新星爆発の残骸の星雲M1(メシエ1と読んだり、エム1と読みます)があります。肉眼では残念ながら確認できませんが、口径10cmクラスの望遠鏡でも倍率を50倍ぐらいにしてのぞいて見ると、ひし形のような形をしたわたがしのような淡い星雲がなんとなくぼんやりと見えてきます。夜空が暗くて大気が安定している時に、口径が20cmくらいの望遠鏡でのぞくと、もやもやとした突起状の筋が周辺に伸びていて、ちょうど新潟県の佐渡島のような形をした淡い星雲が見えてきます。
 みなさんの近くの科学館や児童館などで開催される星空観望会などで
は、きっとこのクラスの大きい望遠鏡で見ることができるかもしれません。是非頼んで見せてもらうとよいでしょう。

 この星雲は今から約900年以上前の西暦1054年に、超新星が爆発した残骸であることはみなさんもご存知のことでしょう。そしてなんと日本の鎌倉時代の歌人である藤原定家の「名月記」の中にも木星ほどの明るさの見なれない星が現れて輝いていたという記録が残っています。なにせ太陽の数億倍という光とエネルギーを一気に放出する大爆発だったので、その様子は昼間の空でも見ることができたようです。
 現在でもこの星雲は爆発当初の勢いで、毎秒1300kmというとてつもない速さで四方八方に膨張しつづけています。実際に、50年ほど前のかに星雲の写真と現在のかに星雲の写真の位置を合わせてみると、明らかに背景の恒星との位置関係から見てもふくらみつづけていることが分かります。
 
 このかに星雲ができた原因である超新星爆発は、他の通常の新星の爆発よりも激しい爆発が起こったと考えられています。超新星爆発では、その星を構成していた物質はすべて吹き飛んでしまうはずです。しかしながらこの星雲の中心には、直径がたったの10kmぐらいしかないのに、質量は太陽と同じほどあるという、つまり角砂糖1個分の重さがなんと100兆トンもある、小さいながら超重量級の高密度の中性子星であるパルサーが発見されています。そしてこのパルサーは、1秒間に30回転というすさまじい速さで自転していて、同時に脈拍(パルス)のような強弱のある電波も放っているのです。

☆ワンポイント:夜空にはたくさんの星雲や星団そして小宇宙が点在しています。この中でも比較的小口径の望遠鏡や双眼鏡でも見ることができる天体で「メシエ天体」と呼ばれているものがあります。メシエとは17世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエの名前からつけられています。メシエ天体はかに星雲のM1のように、アルファベットのMを頭につけて表します。M110までの番号がふられていますが、しっかりとその位置が確認されている天体は全部で107個です。このメシエという言葉はよく使われるので覚えておくとよいでしょう。

(星図はStellaNavigatorから編集)


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