★散開星団ヒアデスと1等星アルデバラン

 おうし座の顔の部分にあたる場所に、赤い1等星アルデバランを含んで肉眼でも5〜6個の星がV字の形をしてならんでいるのが目につきます。これがこの星座にあるもうひとつの大きな散開星団ヒアデスです。日本では昔から地域によって、この星団をその形からお寺にある釣鐘に見たてて「釣鐘星」とか「つき鐘星」などと呼んでいました。またギリシア神話的な見方をしていた地域もあって、「馬の顔星」と呼んでいるところもあります。

 双眼鏡で眺めると、その数は100個以上の美しい星が群れた輝きとなり、視野いっぱいに散らばるその様子はため息ものです。双眼鏡をお持ちの方はぜひとも一度のぞいて見てください。
 
 このヒアデス星団までの距離は150光年で、さきほどのプレアデス星団よりも1/3も手前にあり、私たちの地球からもっとも近くにある散開星団です。そして見かけの直径が5.5°ほども大きく広がっていますので、この星団の実直径は約30光年となります。だからヒアデス星団は大きく散らばって見えるのです。ところが年齢のほうはプレアデス星団とは反対にかなりの老齢で、およそ10億歳ぐらいのお年寄り散開星団と推定されています。

 さて一方、ヒアデス星団の中にあり、ちょうどおうし座の眼にあたる光度0.9等のアルデバランは、太陽の直径の45倍もある赤色の巨星で、太陽の約100倍という明るさで輝いています。アルデバランとはアラビア語でプレアデスにつづくものという意味で、いつもプレアデス星団につづいて東の空から昇ってくるさまから名づけられました。
 このアルデバランは、見た目はヒアデス星団の中で輝いているように見えますが、実際の距離は60光年なので、距離150光年のヒアデス星団よりもかなり手前にあり、本当は星団とはまったく関係のない星なのです。
 またアルデバランは二重星でもあります。アルデバランから125秒角も離れたところに10.9等星の星がくっついています。角距離はかなりありますが、アルデバランとの光度差があるため、10cmクラスの望遠鏡を使えば分離して見ることができるでしょう。

☆ワンポイント:夜空できれいに輝いている星の中にはよく目を凝らして見ていると、1つだと思っていた星のすぐ横にもう1つひっついて光っていたり、双眼鏡や望遠鏡で見ると3つに分かれて見える星があります。これが「二重星」、「三重星」と呼ばれるものです。そのなかでもりょうけん座α星、はくちょう座β星、アンドロメダ座γ星は色のコントラストもとても美しく、三大二重星と呼ばれています。

(星図はStellaNavigatorから編集)


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