オルフェウスは、ハーデスに自分がなぜここに来たのか、いままでたどってきた道のりをすべて話しました。そして、妻エウリディーケを自分のもとに返してもらるように頼みました。しかしハーデスは、一度死んだものを生き返らせるわけにはいかないと、首を横に振りました。何度説得してもハーデスの答えは同じです。オルフェウスはリラを取り出し、一生懸命に自分の気持ちを音にして伝えました。それを聞いて感動したのは、人間である妃ペルセフォネーでした。ペルセフォネーがお願いすると、ハーデスはしぶしぶエウリディーケをオルフェウスに返すことを許してくれました。ただし、地上に出るまで絶対にエウリディーケの顔を見てはいけない。振り返ってはいけないという約束をすることになります。

 オルフェウスは、エウリディーケの手を引いて喜び勇んで瞑宮を飛び出して行きました。川を渡り、洞窟の階段をエウリディーケの手を引きながら上がって行きます。しかし、絶対に後ろを振り返ってはいけません。少しでも早く自分の愛する妻の顔を見たい!。そう思うオルフェウスは、駆け足で階段を昇っていきました。あと少し、あと少し!。地上の光が見えてきたとき、我慢しきれなかったオルフェウスは、つい後ろを振り返ってしまったのです。

 握ってきたはずのエウリディーケの手はほどかれ、その姿は洞窟の奥に吸い込まれるように消えて行ってしまいました。オルフェウスは、自分のしてしまったことを後悔しましたが、もう一度、エウリディーケを連れ戻そうと再び洞窟の中へと入っていきました。しかし渡し守りのカロンは、こんどは何度リラを弾いても、その気持ちには応えてくれませんでした。

 とぼとぼと洞窟の階段を昇り地上に戻ると、オルフェウスは放浪の旅に出ます。行く先々でリラで悲しい旋律を奏でるうちに、酒の神ディオニソスの祭りを見つけました。しかし、悲しい旋律しか奏でることができなかったオルフェウスは、酒に酔ったニンフたちに殺されてしまい、バラバラにされてリラごと川に投げ込まれてしまいました。

 その後、オルフェウスの亡骸は神によって集められ葬られましたが、リラだけはそのまま海まで流されて、後にゼウスによって天にあげられたのが、このこと座だと言われています。


このPageを表示すると流れてくる音楽は、18世紀の作曲家グルックが、このギリシャ神話をもとにして書いたオペラ「オルフェウスとエウリディーケ」の中で演奏される「精霊の踊り」という曲です。フルートの独奏曲として有名ですね。
前のページへ 次のページへ