7月下旬に大彗星になるか?

LINEAR(リニアー)彗星(C/1999S4)

 地球に衝突する可能性のある小惑星を未然に発見するために、夜空をくまなく撮影して探索しているアメリカ・リンカーン研究所の地球接近小惑星(LINEAR = Lincoln Laboratory Near-Earth Asteroid Research)プロジェクトチームは、1999年9月27日にぎょしゃ座を移動している17等の天体を発見しました

 この天体は、最初は小惑星として観測されていましたが、世界各地から追跡観測をした結果、彗星であることがわかり、IAU(国際天文連合)から、彗星として認識するための仮符号C/1999S4が付けられました。
 その後の観測によりこの彗星の軌道を計算していくと、2000年の7月下旬に地球に接近し、肉眼でも見えるほど明るくなる可能性があることがわかったのです。

 彗星というと、1996年に地球に接近した百武彗星(C/1996B2)や、1997年のヘール・ポップ彗星など、美しい尾をたなびかせた姿を思い出しますね。はたして、今回のLINEAR彗星(C/1999S4)は、それほどの大きな彗星として私たちの前に姿を見せてくれるでしょうか?。

 LINEAR彗星(C/1999S4)は、地球からの見かけ上太陽に近づく3月下旬までは13等ぐらいと、予報より少し暗めに観測されていました。このまま期待外れの彗星になるかと思いきや、5月14日にハワイ・マウイ島のハレアカラでこの彗星を観測したMike Linnolt氏は、20cm反射望遠鏡で眼視による観測に成功。明るさは11.6等とかなり明るく観測しています。これからがとても楽しみになってきました。

 これからこの彗星は地球にどんどん近づいてきます。最も近づく7月24日や最も太陽に近づく7/26日ごろには、長い尾をたなびかせると考えられます。

 この頃の地球と彗星の位置関係は、太陽からの距離が約0.7AU、地球から約0.4AUとなり、百武彗星(C/1996B2)の1996年4月上旬ごろの位置関係に非常に良く似ています。見える方角もほぼ同じです。あの百武彗星の感動をもういちど見ることができるとしたら、やはり期待せざるにはいられませんね!。

 1996年4月6日の百武彗星(C/1996B2) 200mmF4にて撮影
 このときの位置は地球から0.49AU 太陽から0.71AUでした。

撮影:編集部 S.Funamoto 

フィンランド シリウス天文同好会(Astronomical Association Sirius)
ニィリョーラ(Nyrola)観測所で撮影された、2000年1月28日のLINEAR彗星(C/1994S4)
順調に彗星らしくなっているのがわかりますね。

撮影データ:2000年1月28日 18:56(UT) 
      Meade LX200-40 + F6.3レデューサー
      SBIG ST-7E 冷却CCDカメラ + AO-7 2×2ビニング 5分露出×4枚コンポジット 
撮影者:マルコ・モイラネン(Marko Moilanen)氏 アルト・オクサネン(Arto Oksanen)氏

 日本では、近日点通過後の8月上旬まで非常に良い条件で観測することができます。6月から7月にかけては、明け方の東の空で観測され、7月から8月にかけては夕方の西の空で観測することができます。7月の中旬ごろは、夕方と明け方と2回の観測も可能になっています。それぞれの空の様子はこちらをご覧ください。
 7月から8月にかけての夕方の西の空での移動の様子はこちらの画像下の画像は宵の空での動きをシミュレーションした画像で、東京で薄明がほぼ終了する20:30ごろの北西の空の様子を5日おきに表示しています。彗星の明るさや尾の長さは、それぞれの彗星によりかなり異なるため、この彗星が実際にどのような姿を見せるかはまだわかりませんが、これから大変期待ができることは確かです。日本からは継続した観測ができますので、皆さんも是非追いかけてみてはいかがでしょうか。


7月〜8月の東京での午後8時30分ごろの予想図 正面が北西 薄いブルーの線は彗星の尾が延びる方向

LINEAR 彗星 (C/1999S4) 軌道要素 (放物線)

元期       = 2000/08/04.0 (TT)

近日点通過 = 2000/07/26.1666 (TT)
近日点距離 = 0.764970 AU
近日点引数 =  151.0685
昇交点黄経 =   83.1902 (2000.0)
軌道傾斜角 =  149.3897 

(Calcurated S.Nakano from MPEC 39791)

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