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【観測条件】
天 体 名: M 82 (NGC 3034)
使用望遠鏡: すばる望遠鏡 (有効口径8.2m)、カセグレン焦点
使用観測装置: FOCAS
フィルター: B (0.45μm)、V (0.55μm)、Hα (0.65μm)
カラー合成: 青(B) 、 緑(V)、赤(Hα)
観測 日時: 世界時2000年2月2日
露出 時間: 30秒 (B)、25秒 (V)、 120秒 (Hα)、各色2フレームをディザリング
視 野: 直径約6分角
画像の向き: 上が北、左が東
位 置: 赤経(J2000.0)=09時55分52.2秒、赤緯(J2000.0)=+69度40分47秒 (おおぐま座)
【説 明】
地球から約1200万光年の距離にあるM 82 (注) は、その形から不規則銀河と呼ばれている。
図の中心から左上と右下の方向に青白く輝く部分が星の集団の銀河である。この銀河に垂
直な方向に広がるフィラメント状の赤い部分は、電離した水素ガスが放つ赤い光の Hα線
(中心波長は6563 オングストローム)である。これらの広がりは、銀河の中心からそれ
ぞれの方向に1万光年以上にわたる。
この画像は、すばる望遠鏡に取りつけた微光天体分光撮像装置 FOCAS
を用いて、FOCAS の
ファーストライトの日である2000年2月2日に撮像したものである。装置の機能がすべて作動
するようになると、FOCAS では6分角の視野内にある100個もの天体のスペクトルを一回の露
出で観測できるようになる。
M 82 から Hα線が噴き出す原因は、1960年代の初頭には銀河の中心部で起こった巨大な
爆発によると考えられていた。その後、M82の中心部には巨大な分子雲や多くの超新星の残
骸が発見され、また国立天文台野辺山宇宙電波観測所の 45 mミリ波望遠鏡による電波観測
では、M82の中心部から外側に 向かって分子ガスが流出していることが分かってきた。そ
こで現在では、銀河中心部における活発な星生成(スターバーストと呼ぶ)や超新星爆発に
より、高温の電離した水素ガスが銀河の外側まで噴出しHα線として見えている、と解釈さ
れている。このような現象は「スーパーウィンド」と呼ばれており、銀河内の物質を銀河の
外側へ運び出し、銀河間空間を加熱する重要な役割を持っている。スーパーウィンドを詳し
く研究することは、銀河の進化や銀河間空間のガス組成などを理解する手がかりと考えられ
ており、M82は格好の研究対象であるといえる。
1999年1月のファーストライト以降、すばる望遠鏡の調整作業は、最終段階に向けて順調
に進んでいる。さらに、第一期観測装置も次々と立ち上がり、望遠鏡の調整と共に試験観測
が行われている状況である。2000年中には全国の研究者による共同利用観測が始まる予定
であり、すばる望遠鏡による新しい発見が期待されている。
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注:1784年にフランスのアマチュア天文家であるシャルル・メシエ (Charles Messier) が
まとめた天体のリストは Messier Catalogue (M) と呼ばれている。M 82 は、このリスト
中82番目の天体であることを意味する 。またドライヤー (J.L.E. Dreyer) がまとめた星雲
や銀河のリスト (New General Catalogue; NGC) では、M82 は NGC 3034 と表されている。