東京を流れる大きな川のうちの一つ、荒川をさかのぼり、埼玉県北部までやってくると、東京での堂々とした流れとは打って変わって、清らかなせせらぎが山あいを縫って流れるようになります。 岩畳や川下りで有名な長瀞を過ぎ、荒川と木立をへだてたとても自然豊かな場所に、宮内光学工業(株)の本社工場があります。 写真:中央を流れるのが荒川 その手前が工場 川の向こう側は皆野町中心部 秩父市方面 |
今回の取材を快く受けていただいた、鈴木社長にお話しを伺いました。 編集部: 鈴木さん: OEMメーカーとして信頼される製品を作り続けることは、自社ブランドの製品を作ることより大変なことではないですか? 設計から素材の生産・加工・塗装・組立・検査・出荷までをすべて自社内で行うことで、安定した製品を送り続けたことが、メーカーさんへに実績として高く評価されたのだと思います。 現在作られている製品についてお聞かせください。 いままでのOEMメーカーとしての技術と自信を元に、自社ブランドの製品を作っています。普通の双眼鏡で天体を見ると、顔を空に向けなければならないため、安定した姿勢で見ることができないので、この接眼部を45度曲げた製品を作りました。現在は90度のものも発売しています。 (左写真:フラッグシップモデルのBR141 141mmフローライトレンズ使用の双眼鏡) いままでに作られた製品のお話しをお聞かせいただけますか?。 「V6・V8・V10」という3種類の倍率の双眼鏡を、アメリカ向けに輸出していたことがあります。当時日本からの製品の輸出には通産省の承認が必要で、毎年決められた数の製品しか輸出することができませんでした。しかし、この双眼鏡は大変に評判が良く、アメリカからの要望も強かったためこの輸出枠とは別に特認貨物として輸出することが認められ、アメリカの大衆紙に記事として載ったこともあり、一気に10万台もの注文が殺到してしまいました。 10万台も!。さすがにアメリカの市場の大きさを感じますね。 ところが、私たちの工場ではそれまで月に1000台程度の生産量でしたから、急にそれだけの数を生産する能力はなかったのです。それでもなんとか月に5000台の生産まではできるようにしたのですが、アメリカからの月1万台の要望に答えることはできませんでした。アメリカではこの双眼鏡は通信販売で売られていて、商品より先に代金がディーラーに支払われているため、製品が送られてこないということは即クレームにつながってしまいます。結局、アメリカでの販売は打ち切られてしまい、残ったのは拡大した工場と従業員という結果になってしまったことがありました。 せっかく多くの人に認められる良い製品を送り出していても、うまくいかないことが多いのですね。 私は物を作ることが好きで、他の人がやっていることは絶対にやりたくないと思う方なんです。今の話のように、金儲けには縁がないのでしょうね(笑)。 自社ブランドの製品を作るようになって、いままで少なかった販売に対するご苦労もあるのではないかと思うのですが・・・ 本社内にショールーム(右写真)を設けて、直接いらしたお客様にご覧いただいて販売しています。それ以外に、全国の望遠鏡などの販売店にも私が直接足を運んでいます。しかし、無理に商品を売るのではなく、より多くのユーザーの方にミヤウチの商品を知ってもらう場所を作って欲しい思っています。 普通に売られている天体望遠鏡の売り方とまったく反対の発想ですね。このような実用本位の望遠鏡が多く世に売り出されると、きっと望遠鏡の世間での見方も変わってくるかもしれませんね。 今の「Saturn」の場合は片目でしか星を捕らえることができないのですが、片目ではどうしても長い時間見続けることができないんですね。そこで、多くの方からの要望をうけて、両目でかつ高い倍率で天体を見ることができる双眼望遠鏡を作ることを考えています。しかし、倍率を高くすることによって左右の目の光軸の狂いが大きくなってしまいます。要望として多いのが、センターフォーカス(編注:ピントあわせを中央の回転部分を回すことにより両目を同時に合せることができる機構)にして、アイピースも市販のアイピースが使えるようにして欲しいというものですが、市販のアイピースはそれ自体の光軸のズレがあるため、実際には専用品を用意することになると思います。 かなり実現に近づいているような感じがしますね。これからも良い製品を私たちに提供してください。 |
お話しを伺ってから、工場の中を案内していただきました。
生産から出荷までをこの工場内ですべてできるよう、たくさんの設備が備えつけられています。あまりに設備がたくさんあるため、設備だけをこちらのページにまとめてみました。 |