宇宙から見た有珠山

 昨年12月にアメリカNASAが打ち上げ、現在各種性能試験が行われている地球観測衛星「TERRA」に搭載されているセンサーのうち、可視から赤外までの光の波長から地表の現況や温度分布などを観測し、資源探査や火山活動を調査するASTER(Advanced Spaceborne Thermal Emission and Reflection radiometer)が、現在噴火中の北海道有珠山を撮影しました。

 TERRAは、地球の表面から705km(地球の直径の約1/20)の上空を周回していて、地球の北極点と南極点のほぼ上空を通過する極軌道(地球の赤道に対する軌道傾斜角98度)を持つ人工衛星です。極軌道を持つ衛星は、地上のあらゆる場所の観測をすることができます。このTERRAに搭載されたASTERセンサーは、地表の反射光の波長による物質の同定・区分や温度の測定を行います。ASTERセンサーは、ASTERプロジェクトとして日本の通商産業省が、通商産業省直轄の研究機関と各電気メーカーの協力を得て製作したセンサーです。

 今回、ASTERが撮影した有珠山の画像のうち、4月14日の夜に熱赤外線センサーにより撮影された画像と、4月19日の昼に可視 ・近赤外線センサーにより撮影された画像を編集部で加工・合成して、温度分布を解りやすくした画像を作成してみました。この元画像は、通商産業省と財団法人資源・環境観測解析センター(ERSDAC)より提供していただいたもので、ASTERセンサーの初期チェック中に得られた暫定的結果によるものです。

 最初に表示される画像が可視・近赤外線による疑似カラー画像で、地上分解能15mという高解像度の画像です。画面の白い部分のうち、中央の有珠山の山頂付近に円形に大きく広がっているのは雪に覆われた部分で、その左側に2本立ち上るように見えるのが今回の噴火口からの噴煙です。それ以外にその左側にある白いかたまりや、画面左端の海上などに広がっている白い部分は普通の雲です(地上に影が写っているのでわかりますね)。地上に赤い部分がたくさん見えるのは、植物の葉の部分が赤外光を反射するためです。画面中央に見える有珠山の南側に、赤く目だって見える部分はゴルフ場です。

 一方、後からオーバーラップして表示される熱赤外線の画像は、温度の高い部分が白く写し出されます。こうしてみると、今回の火口だけではなく、有珠山の山頂火口付近や昭和新山の溶岩ドームも温度が高いことがわかります。今回の火口から洞爺湖に流れ込む川が泥流によって温度が上昇しているのもわかります。また、今回の火口の左上の黒い温度が低い部分は、おそらく雲ではないかと思います。他にも、地上の微妙な温度変化もこの画像からわかりますね。

各画像データ
  可視・近赤外線 : 4月19日 11時05分 撮影 画面全体に写っている疑似カラー画像 分解能15m
  熱赤外 : 4月14日 21時53分 撮影 オーバーラップしているモノクロ画像 白い部分が温度の高い部分 分解能90m
  両画像を編集部にてシンクロ加工
関連リンク
  (財)資源・環境観測解析センター(ERSDAC)
  NASA TERRA HomePage
  

画像の動きがぎこちなく見にくい場合は、こちらの小さいサイズの画像をご覧ください