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![]() すばるは、皆さんが普通に手にするような天体望遠鏡のように、人間の眼で見る「接眼部」がありません。その変わりに、人間の眼に変わって光を感じとる観測装置がいろいろなところに取りつけられています。これらの装置は、主鏡により集めた光を解析します。波長や研究目的により工夫が凝らされています。現在は、第一期観測装置として、7つの観測装置と1つの補助観測装置が作られています。 すばるには上の図のように「主焦点」「ナスミス焦点」(可視光・赤外線)「カセグレン焦点」の4つの焦点があります。それぞれの焦点に、目的に合った観測機器が取りつけられています。これまでは、主に主焦点に取りつけられた「Suprime-Cam 」(Subaru Prime Focus Camera すばる主焦点カメラ)で撮影された画像が発表されてきました。この冬にすばるに装着されたのは、より分解能の高い観測を要するカセグレン焦点に取りつける3つの装置です。 ![]() 1999年12月に取りつけられた「COMICS」(Cooled Mid Infrared Camera and Spectrometer 冷却中間赤外線分光撮像装置)は、波長10ミクロンと20ミクロンの中間赤外線で観測を行います。惑星系の形成過程や系外銀河の大規模な星形成現象、また星間空間の固体成分であるダストの形成過程を調べることができます。 ![]() 2000年2月に取りつけられた「FOCAS」 (Faint Object Camera and Spectrograph 微光天体分光撮像装置 )は、可視光で高い感度の観測を行う基本装置です。視野内の100個の天体のスペクトルを同時に撮影できる機能を使用することにより、宇宙の果て近くにある銀河までの距離を効率よく調べることができます。 ![]() ついで取りつけられた「CIAO」 (Coronagraphic Imager with Adaptive Optics コロナグラフ撮像装置)は、CIAO は、明るい天体のすぐ近くにある暗い天体の画像を撮影するのが得意な装置で、太陽系外の惑星の発見に威力を発揮します。中央の円柱状の真空容器のなかで光学系や検出器を冷却して使用します。 これらカセグレン焦点に取りつけられた機器により、すばるの8.2mの主鏡とハワイ・マウナケアの最高の気候条件から生まれる高い分解能を充分に生かした観測が、これから行われようとしています。 |
国立天文台・堂平観測所が今年度いっぱいで閉鎖されます。 堂平観測所は、埼玉県小川町、都幾川村、東秩父村の境界にある標高876メートルの堂平山の山頂に、当時の東京天文台の観測所として1962年に建設されたものです。主観測装置として、当時としては国産で最大の口径をもつ91センチ反射望遠鏡が設置されました。東京に比較的近く、アクセスが容易なこともあって、夜光観測室、極望遠鏡、ベーカー・ナン・シュミットカメラ、自動流星儀、50センチ彗星写真儀、月・人工衛星レーザー観測装置などがつぎつぎに設置され、多くの研究者が観測に訪れました。188センチ反射望遠鏡をもつ岡山天体物理観測所と並んで、堂平観測所は、日本の天体観測の中心のひつとでした。人工衛星の観測もここで永いこと続けられましたし、回帰した彗星もいくつか初検出されました。一昨年、昨年と大きく話題になった「しし座流星群」の前回の回帰は、34年前にこの堂平で観測されています。天王星のリングを最初に発見した1977年の観測にも、この堂平観測所が参加していたのです。 開設当時、堂平の空は暗く、微光天体の観測も可能でした。しかしその後、夜空は急激に明るくなりました。高度成長に伴って都市の空は明るく照らされ、東京に近い堂平観測所の観測環境は急速に悪化したのです。一方、世界各地に大口径の反射望遠鏡がつぎつぎに建設されるにつれ、たった91センチの鏡による観測の意義はしだいに低下しました。それに加えて、1999年には、堂平のなんと9倍の口径をもつ「すばる望遠鏡」がハワイで観測を開始したことから、堂平観測所の存在意義は非常に小さくなったと判断されました。その結果閉所が決定されたのです。グリニジ天文台ですら閉所されたのですから、時代の流れで致し方ありません。それでも、観測のため幾夜も堂平観測所で過ごした者にとって、この決定には感慨深いものがあります。 設置されていた観測装置の多くは、すでに他に移設されています。日本で最初に作られた大口径シュミット・カメラである50センチ彗星写真儀は、国立科学博物館が引き取ることに決まっています。ただ、91センチ反射望遠鏡は、いまのところ、はっきりした引き取り先がないそうです。どうなるのでしょうか。 今後、堂平観測所の建物は撤去され、借りていた敷地は、それぞれの町村へ返却される予定と聞いています。 |