あすとろライフ拝見 Vol.3

福島県安達郡

浜野和 弘巳 さん (Hiromi Hamanowa)

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 今回のあすとろライフ拝見は、ご自分で1から作られた天文台を、広く一般の方にも開放している、福島県の浜野和さんのあすとろライフを取材させていただきました。

 「浜野和天文台」は、福島県郡山市の北東部にあり、磐越自動車道の郡山東ICから車で5分ほどの、周囲は畑やたんぼの広がる山あいの田園地帯にあります。

 今日もお天気が良いようです。はたしてどんな星たちと、どんな出会いが待っているのでしょうか。

写真:浜野和天文台の夜

編集部:
 浜野和さんが星に興味をもったのはいつごろからですか?

浜野和さん:
 はじめて興味を持ったのは小学校2年のときでした。学校の先生に勧められて見た、パロマ山天文台の写真集に魅せられたのがきっかけでした。それ以来、40年近く星と付き合っていることになりますね。

 すごいですね!。その間、他のものに興味を持ったりしたことは無かったのですか?。

 しばらくは星ばかり見ていました。8cmの反射望遠鏡(左写真後方)をおじさんに買ってもらって、それがとてもとてもうれしくて。それを使って中学生過ぎまでは、星野写真を撮ったり、小惑星を追いかけたりしていましたが、高校を過ぎた頃からクラッシック音楽が好きになって、ヴァイオリンを弾くようになったんです。就職して仕事で全国を点々とする間も、各地のアマチュアオーケストラに所属したりしていました。最近は、ほとんど弾かなくなってしまいましたけれども・・・。

 私は長男なもので実家に戻らなければならなくて、それまで勤めていた会社を退社してここに戻ってきました。6年くらい前から再び星に興味が戻って、小さな子供たちや、子どもの頃に望遠鏡を買うことができなかった天文中年(笑)の皆さんのために、少し大きめの望遠鏡を作ってみようと思ったのです。

 少し大きめとは・・・・?

 最初から40cm〜50cmクラスを考えていました。

 40cmのコンピュータ制御の望遠鏡で、ドームがついて・・・というと、普通個人のレベルでは考えられない大きさですよね?

 そうですね。でも、そのときは暴力的に(笑)作りたいと思ってしまったんですね。天体観測ドームというものにあこがれていて、一回自分で作ってみたかったんですよ。きっかけとしては、ある日ふと天文雑誌を見ていて、当時ちょうどコンピュータ制御の望遠鏡も出だした頃でした。でも、私は技術的なことや望遠鏡のしくみや、モーターのこと・パソコンのことなどまったく知らなくて、理論書を買ってきてをいろいろと勉強しまして、なんとかできるんじゃないかと思ったのです。ドームの方は、私の仕事は工場のタンクの設計ですから、それは自分で作れると考えたわけです。

浜野和天文台全景 奥様と愛犬Perrowと Perrowは一昨年秋のしし座流星群の日に他界し、その名前はドームに収められている40cm反射望遠鏡の名前としてつがれている。

40cm "Perrow"反射望遠鏡 焦点距離1800mm F4.5と明るい光学系 周辺部のコマ収差が気になるとのこと

 実際に観測所を作られたのはいつごろですか?。

 1996年の9月に現在の土地(53坪)の賃貸契約をして、それからはじめました。もともとここには木造家屋が建っていたのですが、それを取り壊して基礎作りからはじめました。次の年がヘールボップ彗星だったわけですが、それに合せて皆さんに見て欲しいと考えていましたので、1997年の1月ごろは雪の降る中を一生懸命作っていましたね(笑)。

奥様:
 休みの日には朝から晩まで作業して、仕事の日も夜仕事が終わってから毎日深夜1:00ぐらいまで作業をしていました。

 なんとかヘールボップ彗星には間に合って、もの珍しさからマスコミなどにも紹介されて、一日多いときには100人くらいのお客さんがいらっしゃいました。でも、まだ完全な調整もできていない状態でしたから、お客さんが帰られたあと、極軸の調節をしたり光軸を合せたり・・・。今もなかなか光軸があわないんですけれども(笑)。

 浜野和さんの天文台は、公共施設としての公開天文台とは違って、個人の天文台を公開していらっしゃるわけですが、その辺のポリシーなども伺わせていただけますか?。

 自分としては無料で一般公開するというポリシーを持っています。基本的には晴れた夜には毎日できる限り来るようにして、多くの人に星の美しさを知って欲しいと思っています。公共施設では、公開時間が決まってしまっていますから、例えば大きな彗星が来ているときのようにお客さんが集まると、1時間も並んだのに、望遠鏡を覗く時間は1分もない。次から次へとお客さんが来るわけですから、見せてあげたくてもできないわけです。
 それが、個人の天文台であればいらっしゃるお客さんの絶対数も少ないですから、ひとつの天体だけでは無くいろいろな天体も思う存分味わってもらことができるのです。たとえば、自分達が光になった気持ちで、宇宙の広がりを感じてもらう。夏の場合なら、「銀河鉄道を旅する」というイベントをやります。夏の天の川をデネブからアルビレオへ自動導入をかけるわけです。自動導入中も望遠鏡をずっとのぞいていてもらうんです。アルビレオまで行ったら、今度は次の方にアルビレオからアルタイル・・・という具合に移動していく途中も見てもらうんです。

望遠鏡を覗く浜野和さん

天体自動導入はNS企画の「DOG」特注専用仕様

パソコンの画面からDOGに指令を送ると、自動的に目標の天体を視野に導いてくれる

浜野和さんの天体写真コレクション 決して引け劣らない美しいものばかり

 天の川の中の星たちを中を移動していくのは、とてもきれいでしょうね!

 ドームの中で見ているとまるで宇宙旅行をしている疑似体験ができるんですよ。こう言ったことは公開型の公共天文台ではできないと思うんですよね。多くの人に星を楽しんで欲しいとは思いますけれど、その中からひとりでも良いから星に興味を持ってもらえるようなきっかけにしてもらえればと考えています。

 でも、このような形で一般公開していると、他にもいろいろなご苦労があるのではないかと思うのですが・・・

 うちの場合はひとりで頑張ってるんだなという同情心で、かえって励まされたりすることのほうが多いですね。ですから、お客さんで困ったという経験はないですね。みなさん興味を持って接してくれていると思います。

 一般公開することによって、ご自分の星の楽しみ方ができなくなったりということは無いのでしょうか?。

 私も天体写真を撮ったり小惑星見つけたりということもしたいとは思います。でも、それよりは昔から暖めてきた構想というか、そういうものを実現する方が大切だと思っています。つい先日も周辺の自治体から村興しのための天文台建設の話しがあったのですが、私は政治色のあるところには出ていかないつもりでいます。それは、アマチュアのやる部分ではないですよね。

 とてもはっきりとしたポリシーをお持ちでいらっしゃいますね。とても大切なことだと思います。
 ところで、そのポリシーを貫くためには、奥様の理解も必要ではないかと思うのですが、奥様は星はすきでいらっしゃいますか?。

 独身のころは天の川くらいはみましたけれど、星のことはまったくわかりませんでした。けれど、結婚して主人に見せてもらうようになってから、やっぱり好きになっちゃいましたね。

 でも、ほんとうは大変だなって思うような時もあるのではないでしょうか。

 私ひとりしかいない時に、小学生がきたんです。でも、私には望遠鏡のセッティングができなかったのですね。でも、お客さんからみると天文台にいるのにそれができないのはおかしいって思われてしまって(笑)。わたし、謝ってしまいました(笑)。

 それは・・・修行不足だね(笑)

 私はまだ月も入れられないですから・・・

 それは致命的だ(笑)

浜野和さんと理解のある奥様

お友達の細井さん。天文台の近所にお住まい 天文台の運営にも協力している

 細井さんに来てもらってやったときは、とても助かりました

 細井さんは、天文をはじめられてどのくらいになりますか?

細井さん
 私も小学校2年くらいからですね。私には姉がいまして、姉が学校の授業で家に持って帰ってきた星座早見盤をみて、オリオン座を教えてもらったのがきっかけです。今、自宅を新築中で、屋上ドームを作ろうと思っています。

 そうですか!。やはり浜野和さんと同じように公開されるのですか?。

 最初は近所の人に気軽に見にきてもらえるような場所にしようと思っています。

 奥さんが基本的に好きなんですよね(笑)

 趣味にお金を使ってもあまり文句を言われないというのは、とても楽ですね(笑)。

 インタビューの後、40cm反射望遠鏡が入った天文台を見せていただきました。

 この望遠鏡は、全部で1トンもの重さがあります。ドームが全部でき上がってから搬入したので、分解してから会社のユニック(編注:トラックに付けられた簡易クレーン)で釣り上げて、スリットから搬入しました。

 最近楽しんでいる天文現象などはありますか?。

 今は小惑星の掩蔽にはまっています。小惑星の掩蔽って、予報がはずれるところがいいですよね(笑)。予報が予報どおりになんでも起こってしまったら、たぶん興味も半減してしまうでしょう。彗星探したりしている人も同じような楽しみがあるのでしょうね。去年くらいからはまっちゃって、「隠されないですね 今のところ」とかリアルタイムで他の観測者の方と話したりしています。曇ったりしてくやしいときもありますね。せめて、「隠されなかった」という報告はしたいですよね。曇ったっていう報告じゃなくて・・・。

 浜野和天文台のこれからについて、何か考えていることはありますか?

 そうですね。現在のドームや望遠鏡を作ってわかったいろいろな点を踏まえて、さらに大きな物も作ってみたいと思っています。もういちど作ればもっときれいに作ることができると思いますから(笑)。

 もっと大きなもの!。でも、そうなってくるとアマチュアでは作るのが難しくありませんか?。

 ドームではこの大きさが限界だと思います。そこで、今度はカマボコ型の、建物自体が動いていくタイプの観測所を考えています。望遠鏡も、焦点距離の長い良い鏡を使った望遠鏡を作りたいですね。

大きな望遠鏡でどうしても作りたかった(笑)主鏡の清掃点検蓋

鏡筒を補強する目的で内部に作られた内部のリング バッフルがわりにもなっている

DOGに接続されたVSTで使用されるオートガイダー用カメラ 長時間露出の撮影で威力を発揮する

 最後に、浜野和さんから皆さんに何かメッセージはありますか?。

 まず星を見る場合、肉眼で見ても、素晴らしいですよね。双眼鏡でも、素晴らしいですよね。そして、もっといろいろな星をみてみたい。そう思ったときに、すぐに短絡的に高い望遠鏡というのではなく、一工夫してほしいんですよね。昔僕らがやったように虫眼鏡のレンズを組み合わせてボール紙で巻いて見るというように、そんなところからはじまって、なんでこのレンズでは見えないのか。少しずつ工夫する。「そんなものじゃ見えないよ」と頭ごなしに言わないで、自分でやってみる。ガリレオ・ガリレイが発明した望遠鏡だってひどいものだったそうですよね。でも、それを使ってみようという探求心があったから発見できたんだと思います。なんでもいいからチャレンジして、自分自身で実感して、なんでだめなのかを考える。そんな星との接し方をして欲しいと思います。

 今日は長い時間ありがとうございました。これからもたくさんの方に星の世界の楽しさを伝えていってくださいね。

 今回取材をしてみて、けっして目立たない存在ではありながら、地道に活動をしている天文愛好家がまだまだ日本にはたくさんいるのだなということを改めて実感しました。自分達も楽しみ、そしてそこに集う人々みんなが楽しい時間を過ごすことができる。そんなアットホームな浜野和天文台。これからも頑張って欲しいと思います。

 取材 文 写真 : 編集部 船本

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