直径2mの庭先ドーム

埼玉県狭山市
松本 正夫さん(44才)


 子供の頃から星が好きでよく夜空を眺めていたのに、社会人になってからは仕事の忙しさも手伝って、ふと気がつくといつのまにか星を見ることから何年も遠ざかってしまったという経験はありませんか。本屋さんで久しぶりに科学雑誌のコーナーへ立ち寄り、懐かしい天文雑誌をなにげなく手にしてパラパラとページをめくると、天文趣味からちょっと離れている間に「星の楽しみ方、星への接し方がこんなに変わってしまったのか!」と浦島太郎状態になってしまった自分に気付いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
今回は、ご家族とお仕事と星見をとても大切にされている埼玉県狭山市の松本正夫さんの自宅庭ドーム観測所のご紹介です。

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M101(系外銀河)

土星(太陽系第6惑星)

M13(球状星団)

 小学校6年生の時に科学雑誌の付録の中に1枚レンズをボール紙で巻いただけの簡単な望遠鏡が付いてきまして、それで月と土星を見たのが私の天体への最初の接点でした。いや、本当に感動しましたよ。だってあんなに遠い天体が手に取るように見えるんですから・・・。そして中学生か高校生のときに手作りで口径10cmの反射望遠鏡を製作しました。鏡筒は近くのブリキ屋さんに頼んで加工してもらい、鏡と接眼部は通販で購入し、架台は木製で手作りしました。その頃は夜空のきれいな福島県に住んでいましたので、毎晩、惑星を見たり、星雲星団を観察していました。その後、大学生および社会人になってからは全く星空とは無関係の生活を送っていました。ところが昨年1月頃に望遠鏡を購入すると再び天文熱がガアーと沸いてきてしまったのです。

タカハシ BRC250+NJP赤道儀

 その頃はまだ駅前の街灯がこうこうと灯いているマンションの15階に住んでまして、そのベランダから時間の許す限り、冷却CCDカメラを使って天体写真を撮像していました。このスタイルはいままでの天体観望の方法とはかなり異なり、わざわざ出かけなくてもよいので、仕事の合間を見つけて楽しむことが出来ました。しかしながらベランダで望遠鏡のセッティングをしたり、パソコンなどの配線をしたり、片づけたりの作業が結構大変で、設置作業や準備作業をしたくないな、出来ることならドームが欲しいなと感じるようになりました。また2等星までしか見えない所沢市から、空の暗い所を求めて4等星ぐらいまで見える狭山市へ引越ししてしまいました。


 写真を見ていただくと分かるとおり、設置したドームはオーソドックスな直径2mの球形のものです。設置する前は近所の人の目が気になるのではないかと心配していましたが、ドームを設置してみると実はそんなに気になることもなく、住宅街のまわりの風景にわりと溶け込んでしまうのです。近所の方からは「変わった形の物置ですねとか、陶芸の窯ですか」などと言われています(笑)。


望遠鏡の接眼部

冷却CCDカメラはビットラン社製BJ−31Lに光映舎製LRGBカラーフィルターを使用

 ドームを設置してよかった点は、まず風の影響をあまり気にしなくてもよいことですね。また帰宅時間が遅くなった時でも望遠鏡の組立や撮像の準備が必要ないので、スイッチを入れるだけで狙った天体が撮像できて大変便利になったことです。あともう1つ、私はカメラいじりや模型の帆船をつくったりする趣味もあるのですが、仕事がらストレスが多いので徹底してのめり込める趣味が必要だったのです。ドームの中は自分だけの空間であり、まさに秘密基地といったところでしょうか。星を見ているときは他のことは何も考えないで100パーセント没頭できて、大きな充実感が得られます。これは最高のストレス解消になりますね。この前、夜中に満足のいく天体画像が撮れたとき、思わず奥さんを起こしてその画像を見せたら「私、ねむいわ」と言われて、逆にストレスを与えてしまいましたけれど・・・?

 いまはこの次どんな天体を撮ろうかなと考えて撮像プランを練るのが楽しみです。なんだか獲物を狙うような感じがして、とってもスリリングな気持ちです。

 将来的にはもっと空の条件の良い所に移って、家そのものを天文台にしたいですね。一般の方々や子供たちにも開放してみんなに星の話をしてあげられるような私設天文台を造りたいですね。まあ年をとったらのことになるでしょうが。家族は私が言い出したら聞かないことを知っているので、言ってもしょうがないという感じで聞いているようですけど。とはいえ家族の理解がないとなかなかできませんけれども。

愛娘あやちゃん

 最後にこれからドームをつくり望遠鏡を設置しようと考えている方へのメッセージですが、とにかく専門ショップや雑誌を活用して情報収集をすることが大切だと思います。最近ではインターネットで個人ユーザーとの情報交換も可能ですし、自分の天文ライフスタイルに合ったものを創り出すことです。また予算が許すかぎり最初からできるだけよい物を選ぶことです。私も何度か二重投資をしてしまいましたが、よい物はやはりそれなりの結果が得られるものだと思います。

 

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