内惑星の明るさが変わるわけ

 現在発見されている9つの惑星のうち、地球より太陽に近いところをまわっている水星と金星は「内惑星」と呼ばれています。

 地球から内惑星を望遠鏡で覗いて見ると、その姿は三日月型になったり丸くなったり、月が満ち欠けするのとそっくりに見えます。内惑星の明るさが変わる原因は、この月の満ち欠けの原因と大きく関係があるのです。そこで、まず最初に月の満ち欠けについて考えてみましょう。

 月や惑星は、自分自身が光り輝いているわけではなく、太陽の光に照らされて私たちにその姿を見せています。月は皆さんもご存じのように約1カ月をかけて地球のまわりをまわっていて、そのため地球からの見かけ上太陽に照らされている面が日に日に変わっていくため、「満ち欠け」という現象を起こします。夕方の西空に見える三日月は、私たちが肉眼でそのまま見ても、けしてまぶしくは見えません。しかし、真夜中に真南に来る満月を見ると、肉眼ではまぶしいほど明るく輝いています。地上の明かりのない場所に行けば、月の影ができるほどその光は明るいものになります。

 この明るさの変化は、丸い球体である月の表面に、太陽の光が反射して地球に届く面積の変化によって起こります。この、光っている部分と暗い部分の割合のことを「輝面比」という言い方で現します。輝面比が大きいほど、月が反射した太陽の光が地球に届く量が多くなり、私たちはその分月を明るく見ることができるわけです。

 さて、月の満ち欠けによる明るさの変化がわかったとして、これをそのまま金星や水星と同じように当てはめるとすると、最も明るくなるであろう満月のように見える位置関係は、地球・太陽・内惑星の順に直線に並んだ時に起こります(この位置のことを「外合」と呼び、このときの水星や金星は、太陽に近いため地球からは見ることができません)。ところが、外合のときの金星は地球からの見かけ上最も明るい「最大光度(最大光輝)」ではありません。ここには「距離」という要素が関係してくるのです。

 月は地球のまわりを回っていますから、地球との距離はほとんど変わることがありません(実際には微妙に違っています)。しかし、太陽のすぐ内側をまわっている金星は、地球に最も近づいた「内合」(地球・内惑星・太陽の順に直線に並んだ状態)のときの距離は約0.28AU(天文単位)=約420億kmなのに対し、最も離れたと「外合」のときの距離は約1.72AU=約2580億kmと、約6倍もの差があるわけです。

 距離が遠くなれば、見かけの明るさも暗くなります。たとえば夜のホームで電車を待っている時に、遠くにいる電車のヘッドライトはまぶしくなくても、ホームに電車が入ってくるとまぶしく輝いて見えるのとおなじことです。

 この「満ち欠け」と「距離」の2つの要素で明るさが変わって見えることを踏まえて、これを金星の例に当てはめてみましょう。「外合」の位置にある金星は、満月と同じように見かけ上地球から見ている面全体に太陽の光を受けていますから、輝面比はほぼ100%となります。しかし、地球からは逆に最も遠い位置にあることになり、このときの明るさは約-3.9等、大きさは角度の5秒ほどしかありません。この後、金星は「宵の明星」となり少しずつ地球に近づいていきますが、逆に輝面比は少しずつ少なくなります。はじめは輝面比が減る割合より距離が近づくほうが早いため、見かけ上の明るさはどんどん明るくなっていきます。見かけ上太陽から最も離れて見える「東方最大離角」の時にはちょうど半月と同じ(輝面比50%)になりますが、距離は約0.7AUとぐっと近づいてきますから、明るさは-4.3等前後とかなり明るくなります。

 その後さらに金星は地球に接近しますが、しだいに輝面比も少なくなっていくため、ある日を境に明るさは逆に暗く見えるようになります。この境が最も明るく輝く「最大光輝」と呼ばれるときで、明るさは-4.6等前後になります。最大光輝を過ぎた金星はさらに地球に近づき、「内合」の直前には-4.0等まで暗くなってしまいます。

 内合を過ぎた金星は「明けの明星」となり地球から遠ざかっていきながら輝面比が多くなり、再び最大光輝を迎えます。その後は少しずつ遠ざかりながら輝面比を上げて行き、再び外合へと向かって行くことになります。

 さて、もう一方の内惑星である水星の場合は、距離と輝面比の関係はと同じようなのですが、もともと地球からの距離がより遠いため、内合のときは約0.62AU・外合のときは約1.38AUとその差は約2.2倍しかありません。このため、金星ほど距離が近づいたときの明るさの変化がないため、金星のような「最大光輝」の境目が存在しません。もっとも明るくなる外合のときは-2等くらい、内合のときは逆に4等くらいまで暗くなり、まったく地球からはみることができなくなります。

(C)Copyright 1999 StarClick! all right reserved

Q&Aコーナーに戻る