エウロパの海

 木星の衛星の一つエウロパは、凍った地表の下に海の存在を示す様々な形跡があることから、科学者らの探求心を駆り立ててきました。海を示す具体的な証拠はこれまでにまだ発見されていませんが、私達の太陽系において、地球外生物の環境をもつ可能性のある候補の一つとして、様々な研究が進行中です。


更なる形跡を発見、しかし不十分


 米航空宇宙局(NASA)の木星探査機ガリレオから送られてきた高解像画像の研究により、現在多くの科学者らはエウロパの氷の地殻下に、近接する木星からの摩擦によりエウロパの内部が温められて形成されたと思われる流水の海、もしくは温まって循環する氷が存在していると考えています。ガリレオが撮影したエウロパの最新画像は、海の存在の可能性について更に多くの形跡を写し出しています。画像は暗く赤みがかったテラ(左)とトラキア(右)という名の2ヶ所の混沌地域をとらえられています。科学者らは、液状の海もしくは温まった氷がわき出て、畝のある氷の平地を分断したのではないかと考えています。

 このような特徴が形成された過程を説明するため、一部の科学者らはエウロパの地表に塩分を含む地点があり、上昇し温まってくる氷をより低温で溶かす働きをしているのだと考えています。ガリレオの近赤外線マッピング分光計 (NIMS: Near Infrared Mapping Spectrometer)のデータも、茶色い地域と塩分を含む地点との間に相関関係があることを示唆しています。「スペクトル的に一番近いのは、エプソム塩としてよく知られている硫酸マグネシウムです」と米ブラウン大学惑星地質学者のボブ・パパラルド博士は述べています。「問題はエプソム塩が茶色ではないということです。茶色い物質の一番の候補となるのは、鉄化合物もしくは硫黄化合物のようなものでしょう。」
写真:ガリレオが撮影したエウロパの「テラ(左)」と「トラキア(右)」


真実をつかむための様々なアプローチ


 NASAジェット推進研究所(JPL)のロバート・カールソン博士は、エウロパの地表に存在する氷の結晶体が海の存在を決める鍵の一つとなると述べています。カールソン博士によると、エウロパで見つかる可能性のある氷の形態の一つに六方晶系の結晶体があります。地球上の氷と同様、六方晶系の氷晶は170K(ケルビン=絶対温度、約マイナス103℃)以上の温度で水もしくは暖かい水蒸気から形作られるはずなので、エウロパで六方晶系の氷晶が見つかれば、それは水もしくは暖かい水蒸気の源が存在しているということになります。

 一方、大きさがオンタリオ湖ほどもある巨大な湖で、南極大陸の南極から1,000マイル(1,600km)離れた地点にあるボストーク湖は、謎を解く鍵になるかもしれません。ボストーク湖は1974年、4kmもの厚さのある氷の下に隠れていたところを発見されました。ボストーク湖とエウロパが環境的に似ているため、一部の宇宙科学者は湖の調査が将来的なエウロパ探査に応用できるのではないかと考えています。ボストーク湖とエウロパのどちらの研究者にも利益をもたらすよう、ある国際科学者グループはボストーク湖の調査用に探査機を開発する共同研究プログラムを始めました。

エウロパ探査の将来


 NASAのガリレオ探査機は1995年12月、木星とその衛星の観測を開始し、現在は今年末で終了する2年間の延長ミッションの最終段階に入ろうとしています。探査機は予定されていたエウロパでの19回のフライバイを完了しています。

 今後のエウロパ探査として、NASAは2003年に「エウロパ・オービター」を打ち上げ、地表の氷の厚さを計測したり地表下に海が存在するかどうかを確かめる予定になっています。ミッションはまた、氷を解かしながら進み深海を探索することの出来るNASA初の「ハイドロボット (hydrobots;遠隔制御潜水艇)」を打ち上げる予定です。
写真:NASAの「エウロパ・オービター」イメージ図

関連サイト: NASA / Galileo



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