サークル紹介 学園祭スペシャル 中央大学 地学愛好会

 中央大学多摩キャンパスの第33回白門祭は、1999年10月31日から11月3日まで開催されました。全国屈指といわれる中央大の学園祭は、画像でもみてわかるように非常にたくさんの学生達で熱気にあふれていました。

 地学愛好会は、この広いキャンパスの5号館4階で、プラネタリウムの投映と写真・化石などの展示を行っていました。

エレベーターをおりるとこんな立て看板が

会員の撮った天体写真や冷却CCDによる画像が所狭しと展示されている

会誌「星砂」(左)と希望者に配っていた化石のレプリカ(右上) 白門祭のパンフレット(右下)

鉱物や化石の展示 採石の方法やどのような場所で見つかるかなどを詳しく解説

廊下にも四季の星座の解説が貼り出されている

プラネタリウムは30分おきに上映

 プラネタリウムは、扇風機で風を送り込んで膨らませるエアードーム構造のスクリーンに、大きな天球に5等星までの恒星をピンホール式で投影するもので、惑星や月・天の川などの付属投映機も備えた本格的なもの。じゅうたん敷きの上に地べたに座って星空を楽しみます。

投映機の解説をする杉山さん

投映中の天球の輝き

地学愛好会の皆さん

会長の児山(こやま)さん

 地学愛好会の皆さんにお話しを伺ってみました。

編集部:会ができてから何年になりますか?

会長 児山さん:私が27代目ですから、27年目ということになりますね。会員数は最近出入りが激しいのできちんとした数字はわかりませんが、30人くらいいると思います。

普段はどのような活動をしているのでしょうか?

毎月1回の月例観望会というのを開いている他、多摩市と協力して月一回の市民観望会にボランティアとして参加しています。ボランティアとして参加しています。また、定期的に化石堀りとか水晶堀りもやっています。

月例観測会はどのようなことをしているのですか?

車の手配がつけば山梨の清里や秩父の栃本広場に出かけています。車の手配が付かないときは、キャンパス内で月とか惑星を中心に観測します。最近は冷却CCDを導入して、大学の近くで星雲星団の撮影なども行っています。去年の夏にはペルセウス座流星群にあわせて、有志5人くらいで富士山の山頂に登って星を見ました。

星に興味を持ったのはいつごろですか?

児山さん:小学校の3年生か4年生のころ、ハレー彗星が近づいた頃でした。父親に連れて行ってもらって、ちょっと暗いところまで行って星空を見せてもらったんですね。その感覚が頭の中にこびりついていて、そこから星に対する興味が湧いてきたような気がします。

杉山さん:なんだか解らないけれど気がついたら興味をもっていました(笑)。シューメーカー・レビー第9彗星の木星衝突を自分の望遠鏡でみたいなと思って、反射望遠鏡を買ったんですね。望遠鏡ってどうなっているのかなぁと思って、それをバラバラして、なおすために組みたてて・・・と、ガチャガチャいじっているうちにはまってしまっいました(笑)。

上野さん:小学校4年か5年のころに、学校の熱心な先生で星空観望会を開いてくれて、それでとても興味を持ちました。

左から、児山さん 浅川さん 上野さん

左から 村田さん 青山さん 継岡さん

斉藤さん:私の実家は秋田なので星が見えるのがあたりまえの場所だったのですが、高校まで天文部というものが無くて、大学に入ってはじめてこういうサークルに入りました。

岩田さん:特にいつからっていうのは無い気がするんですけれど、寒い冬の夜とかに星が見えたりすると、「きれいだなぁ」と思います。

青山さん:最初は学校の理科の授業だったと思います。木星に彗星が衝突したときに、それが地球に来るんじゃないかといろいろ調べているうちに、宇宙に興味をもちました。

サークルで活動していて楽しかったこと・辛かったことなどありますか?

山田さん:僕は全然知識がなかったので、いろいろなことを教えてもらってから星を見てみるととても面白いですね。辛かったことといえば、寒いこと。寒い中で星を見るのはつらいですね(笑)

浅川さん:去年のしし座流星群がとても印象に残っています。清里で見ていたのですが、あの大火球(編注:4時13分に出現した)を見られたのがとてもうれしかったです。空が一瞬パーっと白くなった感じでしたね。辛いことというと、夜眠いことですかね。私はいつもドライバーなので大変です(笑)。

児山さん:私は寒いのとか眠いのは苦にならないですね。富士登山観望会のときに、いままで見たことがないような、すごい星空を見たときに、もうなんていうのかな、口では言い表せないようなすごい感動を覚えたんですね。あれは一生の思い出です。観望会をやっていていやなことというのは、活動が天気に左右されていつも活動ができないというのがまどろっこしくていやですね。

斉藤さん:楽しいのは、みんなで星を見たりできるということです。合宿とかすごく楽しかったですね。辛かったことと言えば、夏なのに朝が寒いということです。なめた格好してひどい目に遭いました(笑)。夏でもセーターが必要だということを初めて知りました。教訓です。

青山さん:サークルに入って良かったことは、水晶を掘ったり、星を見たりしたときに、たとえば水晶が地面に落ちていることとか、星には、プラネタリウムみたいに天球上に張りついているんじゃなくて、遠近があるっていうことを知ったときに、科学ってすごいなーと感じることができたことですね。でも、夜サークル活動した後は朝が眠いですね。それから、両親が夜活動するとあやしいサークルだと思われて、それを説明するのがとても大変です。観望会のたびに説明しなければならないので・・・。

あやしいサークルじゃないですよね?

児山さん:それはもう!健全ないいサークルです(笑)。

今後サークルとしてやってみたいことはなんですか?

児山さん:日々、天体観測用の機器というのは発展していますので、そういうものの流れを敏感に察知していきたいです。例えば最近CCDカメラというのを導入したばかりなのですけれども、そのCCDカメラで流れに遅れないように、最新の天体情報を追いかけて行きたいですね。あと、活動の枠がどんどん広がれば良いと思いますね。いろんなところから市民観望会を行いたいので協力してくれという話しがよくあるのですけれど、そういうところとも極力たくさん交流を持って、地域の輪にも加わっていけば、活動がもっと充実できると思います。

左から石坂さん・浅川さん・太田さん・杉山さん

 中央大学地学愛好会の展示の最大の売り物とも言えるプラネタリウムについて、その製作スタッフの現役生・卒業生に、その苦労などを詳しくお伺いしてみることにしました。

プラネタリウムを作ろうと思ったきっかけはなんですか?

杉山さん:このおじさん(と隣を指差す)が作りはじめたんです(笑)

太田さん:もともと 私が入ったときにすでにプラネタリウムというものがあったのですが、私が大学2年の1993年に今の機械を作りはじめました。

外観は、球体や外の青いボディーとかはその当時のままなのですが、動力部分や電源装置も非常に簡単な、ある意味突貫工事みたいな感じで、'93年夏に取り組み初めて、その秋の学園祭にはもうデビューして、そのあと彼らがそれを引き継いだという形です。

球の部分はとても精密によくできていますね。あれはどういうふうに作ったのですか?。

透明のアクリル半球を2つあわせた物で、そこに座標の線を引いて、星図をみながら星の位置を明るさごとに色を変えて点を打っていって、打ち終わったところで裏から黒く塗装をして、そのあと表から電動ドリルで明るさに応じて大きさをかえた穴をあけました。最初は6等までやろうと思ったのですが光が漏れすぎるので、5等までにしました。一番苦労したというと、その穴明け作業ですね。ドリルは何本も折りました。

穴明け作業はどのくらい時間かかりました?

共同製作者がいまして、天球の方は入れかわりたちかわり手のあいた人がやっていました。2カ月くらいかかったと思います。

"ZETA OMIKOSHI KANJI SILENT"

プラネタリウム投映機本体

画像をクリックすると回転している動画が見られます

恒星球を回す動力は変わっていったということですが・・・

私が作った当時はタミヤの模型用の工作セットのギヤとマブチモーターと組み合わせて使っていたので、音もとてもうるさかったんです。私が思い付いたのはその方法くらいだったのです。音を小さくしてスムーズに動かせるようにするために、いろいろな方法を考えたのですが、4年まで頑張ったんですがなかなかできなくて・・・。私が卒業してから彼(杉山さん)が引き継いで、天体望遠鏡用のモータードライブを使って実現したのが今の動力です。

杉山さん:僕が見たときは トルクがかかるとモーターをマウントしている木が歪んですぐに空回りをしてしまうので、真鍮の板を張り付けてアルミの削り出しのモーターマウントを取りつけて、そこに望遠鏡のモーターを取りつけ、軸出しの修正ができるようにして、動きをスムーズにして音を静かにしたんです。モーターのマウントを強くした結果、重い物もしっかり支えることができるようになったので、天球を支えるシャフトを真鍮引きの太い物にして、そこに惑星投影機などの付属機械がたくさんつけられるようにしました。小型の自由雲台をたくさんつけて、そこにいろいろな投映機などをとりつけられるようにしました。また、必要な機能を後からでも追加できるように、オーディオ用のピンジャックをたくさんつけて、電源を供給できるようにしました。

天の川投映機は最初からついていたんですか?

太田さん:最初からついていましたけれど、天球が重い上に、そこにいろいろな付属品をつけていくという過程で、動力部品とのバランスで付属部品はなるべく軽くする必要があったのです。天の川投映機は紙製にしたので位置がずれやすかったんですね。それが、動力の強化でしっかりするものが取りつけられるようになったのです。

石坂さん:天の川の光は、紙に虫ピンで穴を開けて作ってあるんです。穴の開き方で濃くなったり薄くなったりとても微妙で、今のようにちょうどよい光量の天の川を出すのはとても難しかったんです。

杉山さん:月・太陽・惑星といろいろな投映機を付けていくと、こんどは電源の問題が出るようになりました。それまでは3Aの安定化電源を使っていたのですが、今年は電源の配給量を大きくして余裕を持たせました。いずれは星座絵も同時に動かせるようにしたいと思うんですけれど・・・それは後の代にまかせようかな(笑)

次の代に受け継いで行くというところがたいへんじゃないですか

太田さん:それが課題ですね。

杉山さん:一旦荒れ果てて、それがまた復活してというような・・・

石坂さん:ひどい!(笑)。それって私が責任者の時をいっていません?(笑)。かんじさん(太田さん)が卒業した後の一年間、機械班は私と女の子の二人だけ。二人とも技術屋ではなかったのでまさに試行錯誤の連続。次の年、後輩として機械に詳しい杉山さんが入ってきてくれて「これやりましょう、あれやりましょうよ」とやたらにけしかけていました。

太田さん:まぁ基本的に文系の人達ですから、必ずしも機械を扱うのが好きな人ではない場合もあるんですよね。今はうまいぐあいに杉山さんがいるからちょうど良いバランスになっているんですけれども。

杉山さん:これ以上の発展を望まなければ、これでひとつの完成であると思います。昔は電球が飛んだり動力の問題とかいろいろとあったのだけれど、今はそういうものがなくて、トラブルも少なくなりましたからね。

あのドームはとてもよくできていますよね?

杉山さん:ドームは先祖代々、昭和の時代から受け継がれている1989年製のものです。だれが作ったのかという記録は残っていないんですよ。その時代からプラネタリウムはあるんですね。

太田さん:今年で10年ということになりますね。プラネタリウムの投影機は、私の先輩が作ったものと、その前があったらしくて、今使っているもので3台目になりますね。

杉山さん:あのドームは、まわりにやぐらを組んで釣り下げています。もともとはドームを完全遮光にする目的で、やぐらを暗室用の暗幕で覆っています。やぐらは4.5m角の高さ2.5mでLアングルを組み合わせて使用しています。

エアードームに中から風を送り込んでいる扇風機 ドーム内に3台ある。

石坂さん:いままではドームの両脇に積み重ねて真中に棒を一本通して、ちょうどはんごうでご飯を炊くときのようにドームを吊るしていて、とても不安定だったんです。遮光は窓のガラスの部分に黒い模造紙とダンボールをガムテープで張っていたんですね。それだと朝の熱光線でペリペリとはがれて、光りが漏れちゃったりたいへんだったんです。それから、アングルもあれだけの大きさのものを作らなければならなかったので、まともにアングルを買うと高くついてしまうので、メーカーに直接かけあって卸値で譲ってもらって予算を少なくすることができたんです。

太田さん:限られた予算の中ですからね。これは自戒も込めてなんですが、我々はあくまで地学愛好会でプラネタリウム部ではないのですから、そのへんの予算の使い方とか力の入れ方とかには気を遣っていますね。

流星投影機 箱のデザインもなかなかこっている

「ところてんブラック」

この他にもそれぞれの機械に愛称がついている

杉山さん製作の新型星座絵投影機

他の周辺機器も充実していますよね?

浅川さん:今年から新しく流れ星投映機が加わりました。去年のしし座流星群を再現しよう!ということで、杉山さんに今年の7月にいわれて、設計図をひいて、材料を探しながら作りました

どんな仕組みになっているんですか?

お盆とかのときの走馬灯をヒントにしました。流星を点にして流すのに、2つのスリットを交差して動かして流すという方法を考えついたんです。止まっているスリットと動くスリットををどう作るか。まず模型屋さんにいって、モーターとギア・半円のプラスチック球をいれて、その中にスリットをいれることにしました。何回かやっているうちに光が出ない!っていうことに気がついたんです。最初は半円のプラ球を黒く塗って、そこをけずって光を出るようにしたのですが、それでは光が拡散してしまって写らなかったんです。そこで、ハンダゴテの先に釘を付けてとかして行って、プラ球に細いスリットを開けたらうまくいきました。

太田さん:星座絵投影機は、「ところてん」と呼ばれる投影機をいままで使っていました。アルミの板に星座の線を点で描いて穴を明けて作りました。でも、それでは持ちづらいし重たいので、それを樹脂板を使って作り直したものを使っています。しかし、それでは投映される絵は点なので、輪郭がわかってもディテールがわからないんですね。

杉山さん:そこで、カメラの逆の要領で星座絵を出すことを思い付いたんです。スライドプロジェクタ
ーの構造をまずしらべて、その構造で作ろうとしたんです。投影レンズにはカメラのレンズを使って星座絵はヘヴェリウスやフラムスチードの星座絵をスキャナでパソコンに読み込んで、それをディスプレイに映したものをカメラでポジフィルムに撮って作ったものを、フィルムスキャナのホルダに入れて入れ換えできるように作ったんです。

石坂さん:その星座投影機も使いながら、いままで使っていた「ところてん」も今回は使っています。今年の1年生たちが「ところてんブラック作り直す〜」と言って作りなおしてくれたんですよ。

プラネタリウムの投映以外に、神話の番組もやっていましたね。

児山さん:当初から星空解説はあったんですが、ただしゃべっているだけだったんです。それではお客さんも面白くないと思って、'95年にスライドプロジェクターを使って星座絵を出すようになりました。それがだんだん進化して、脚本かいて録音してという手作り番組を作るようになったんです。さらに、ラジカセをみんなで囲んで録音していたのを、みんなでマイクを使ってミキシングをしながら録音するようになりました。'98年からはコンピュータを使って絵を作るようになったのですが、このときは神話ではなく、しし座流星群をメインに番組を作りました。去年は人数の関係もあってほとんど私ひとりで作ったのですが、今年は新入生の子がたくさん入ってくれたので、そのバイタリティーを生かしたいと思ったので、私は引っ張っていく立場で作っていきました。

石坂さん:みんな、とっても演技がうまかった!

太田さん:前は単純に役があって棒読みでもOKだったけど、今回は一部プロがいるんじゃないかとおもうほどうまかったですね。

児山さん:主役の人が高校で演劇部にいたこともあって、みんながまじめに取り組んでいる感じで一体感があってとても良かったと思います。

これからどのように発展させていきたいですか?。

浅川さん:今年の傾向からすると、1年生がOBがきても気がつかないくらい夢中になっている姿をみて、ある意味楽観的な期待をしています。

児山さん:今年のノウハウをいかして、来年以降新しいノウハウをどう積み上げていくかが新しい課題ですね。

杉山さん:今のプラネタリウムがある意味完成されてしまっているので、まったく新しい発想のものを作って欲しいかなって思います。

石坂さん:今の1年生が新しいプラネタリウムを作って見ようって、実際のプラネタリウムを見に行ったりとかしているので、また新しいものを作ってくれると良いと思いますね。

 今回取材をさせていただいて、先輩・後輩の壁のない、とてもアットホームな雰囲気が、こんな素晴らしいサークルを作っているんだということを実感させられました。これからも良い活動を続けて欲しいと思います。

(C) Copyright 1999 StarClick! All right reserved

サークル紹介 学園祭・学校祭特集に戻る